贈呈活動に用いる大漁旗を持つ園部浩誉さん=2月15日、東京都中央区

 日本のラグビー史上で伝説化している新日鉄釜石(現釜石シーウェイブス)を応援する風景は、旧国立競技場に舞う色鮮やかな大漁旗が名物だった。岩手県釜石市など沿岸部を襲った東日本大震災から8年。高校や大学、クラブやスクールなど東北で息づくラグビーチームをさらに元気づけようと、元ラガーマンが大漁旗の贈呈を続けている。

 活動の主は、一般社団法人「フライキプロジェクト」代表理事の園部浩誉さん(53)だ。2011年8月にスタートさせ、これまで80以上のチームに大漁旗を届けてきた。東北にある全てのチームへの贈呈を目指す。

 実業団でプレーしていた園部さんは、大漁旗で選手を鼓舞する光景が印象的だったという。法人のネーミングは、釜石市など三陸で大漁旗がそう呼ばれているフライキ(富来旗)から取った。

 

大漁旗を持つデザイナーの三浦正文さん=2月18日、岩手県釜石市

 震災発生時、当時の勤務で関西在住だった園部さん。かつて仙台市で暮らし、ラグビー仲間も多い東北への思い入れは強く、被災地に何度も足を運んだ。救護活動などでヘリコプターの発着所に代用されていた釜石市のラグビー場を見て、大漁旗が頭に浮かんだ。「練習できないチームも多い。何か応援できないかな、というのがきっかけ」

 ラグビーのイベントなどで協力を呼び掛け、集まった寄付金で大漁旗を製作。釜石市に住むデザイナー、三浦正文さん(69)の全面的な協力を得た。三浦さんは「震災後にいろんなところで掲げられていた。頑張るぞっていう印なのかな」。地元の人々にとって大漁旗は特別なものだという。

 今年はラグビーのワールドカップ(W杯)イヤー。会場の一つ、釜石鵜住居復興スタジアムを贈呈した大漁旗で埋め尽くす-。それが園部さんの願望だ。「東北のグラウンドで振られていたら元気の象徴になるし、復興できたという証しを世界に発信できる」。三浦さんも「振っているのを見れば、釜石だって分かる。釜石を知ってもらうのが一番」と願う。フライキが大舞台でたなびく日を心待ちにしている。(2019/03/09-13:05)「大漁旗」で東北に力を=贈呈通じてラグビー支援-東日本大震災8年